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2024/01/24 01:58

『Sings』"北口さんのスタイルとアパレルへの情熱"
北口さんがどのような経験を積み重ね、そしてなぜ「Signs」を始めることになったのか教えていただけますか?

北口さん (以下、敬略称)
大学生の時に始めて"個店のセレクトショップ"の存在を知って、最初はお客として、それからバイトをするようになりました。大学の時に明確に何になりたいみたいのはあんまりなくて。

内村
大学ではファッション関連の専攻だったのですか?

北口
いやいや、普通に商学部ですね。ファッションは兄貴だったり親戚の影響で興味を持ちました。お年玉は洋服に全部使っていましたね(笑)

内村
ファッションが好きになったきっかけのブランドとかありましたか?

北口
中学生の時に買ったラルフローレンのボタンダウンシャツですね!初めはラルフローレンのあのマークが欲しかったんですよ(笑)

でも当時ビームスにいたお兄さんに「後でラルフローレンのマークがいらなくなると思うから、絶対にマークがない方を買うのがいいよ」とアドバイスされ、信じてそっちを購入したんです。大学生になってから偶然そのお兄さんと再会し、当時のことを覚えてくれていたことがとても嬉しく、自分もその頃にはマークがないということの価値を理解していたため、感謝の気持ちを伝えました。

中学生に対してそこまで先のことを考えてアドバイスしてくれたことがとても嬉しく、また洋服との関わりを深めてくれたようで、今考えるとそれが大きなきっかけだったかもしれませんね。

当時の熊本は個店のセレクトショップが充実していたんですよ。昔で言えばブレイズなどのお店がその代表格でした。シャワー通りはセレクトショップ発祥の地とも言われ、お客さんよりも店員さんの方が怖く、洋服を広げるのも怖い、とにかく入りにくい雰囲気がありました。でもそこには強烈な魅力があって、僕は大きな店ではなく小さなセレクトショップで働くことを決めた感じですね。

内村
それは熊本のセレクトショップですか?

北口
そうそう、熊本の個店ですね。大学を卒業するまぎわ、うちで働かないかという誘いを受けて働き始めました。それからまもなく、まだ学生なのに「今から原宿のビームスに来てくれないか」と朝いきなり連絡がありました。当時の僕は東京へ行ったこともないし、飛行機に乗ったことさえなかったので驚きましたね(笑)
そんな社長の期待も感じて、そのまま就職することになりました。

内村
人や物、そして空間など、濃密な出会いが今に繋がっているんですね。

ちなみに僕もラルフローレンが好きで、ワンポイントシャツが欲しかったのですが、その時は願望通りマーク入りをすすめてもらいました(笑)
今のエピソードを伺うと、熊本のアパレル店員さんたちの質の高さを感じます。

北口
なんか、“モノ売り”じゃなく"人を売れ”みたいな。実際には誰からも言われたことはないのですが、熊本にある個店の雰囲気がそう思わせたのかもしれませんね。


北口さんのファッションへの情熱について教えていただけますか?また、ファッションを通してのお客様との関係性を教えていただけますでしょうか。

北口 
どちらかというとトレンドを追うとかではなく“ファッションではなくパッション”というか、自分の想いをしっかりと表現したい感じですね。

内村 
“ファッションではなくパッション”という想いはとても素敵ですね!
北口 
僕自身がマネキンだと思っているので、好きなモノを着て売るという極めてシンプルなスタイルですかね。

内村 
トレンドや特定のテーマに縛られるのではなく、北口さん自身がマネキンであり、Signsのイメージそのものなのですね。

北口 
そんな感じですかね。ただ、コーディネートの時もあれば「白いTシャツが欲しい!」みたいなアイテムに固執する衝動もありますね。それを実現していくことで自分のテンションも上がるので、結構大事にしています。

内村 
衝動に駆られるタイミングってあるんでしょうか?

北口 
突然降りてくる感じですね!デザイナーさんもその時のテンションで物作りしている人が多いような気がします。

どちらかというとSignsにいらっしゃるお客様は、ブランドがどうこうというよりは、人を求めて来てくれる方が多いですね。自分を飛び越えてデザイナーさんと仲良くなる方も多いんですよ。

例えば「KENETTH FIELD(ケネスフィールド)の入荷はありますか?」ではなく、デザイナーさんの名前で「草野さんのとこの入荷はありますか?」みたいな。そこまでお客様が近づいてしまっている感じです。どちらかというと僕は、作り手(デザイナー)とお客様を繋ぐハブ的な役割になっている感じですかね。それがSignsらしくていいかなと思っています。

内村 
デザイナーさんとお客様が繋がるきっかけというのはイベントとかですか?

北口 
そうですね。とにかくお客様とデザイナーさんの距離は近いです。直接LINEでのやりとりもしてますしね。ん〜ざっくり20人くらいはそんな感じでつながっている方がいますかね。

内村 
すごい人数ですね!(笑)
ちなみにですが、それでも購入場所はSignsさんになるんですか?

北口 
基本的にはそうなりますが、時々はブランドの直営店で世界観を感じたいという方がそちらで購入されることもあります。でもその時の写真を撮って、わざわざ僕のLINEに送ってくださったりもします(笑)
とにかくお客様が楽しんでいただくことが一番大切だと思っていますので。

内村
イベント開催における新たな意味合いを知れました。

北口 
ただ、もしかしたら熊本は特徴的で「わさもん」という気質があるからかもしれません。熊本弁で目立ちたがりとか、トレンドに敏感というようなイメージでしょうか。また物を知るとそれを追求する人が多いような印象があります。

内村 
なるほど!つまり物を知るきっかけを作ってくれた北口さんには感謝もしつつも、それを作っている人を知りたい、会いたいという探究心がある方が多いから、そのような状態になっていくのですね。

北口 
そんな感じもしています。なんだろう、ポップアップイベントは「お祭り」みたいな感じですかね。


"Signs"のショップは昨年リニューアルされたとのことですが、そのきっかけや、雰囲気・空間にどのような要素が込められていますか?

北口
この場所には先に2階のDebbyをオープンしていたので、となりに神社があっていい風が抜ける、そんな心地の良い場所だと感じていて、それがここを選んだ大きな理由でした。1階には庭もついていて、内装も好きにいじっていいとのことだったので、すぐに決断しました。

内村
庭があるお店って素敵ですよね!僕も憧れます。

北口
ちょうどSASSAFRAS(ササフラス)という植物の名前を冠したワークウェアのブランドを扱っていたり、親父が植木とか好きで実家には松なども植えられていたりして、その辺りの関連もあっていいなと思っていました。
内村
店内にデレク・ジャーマンの本も飾られていましたが、お好きなんですか?

北口
はい、好きですし、憧れはありますね(笑)
でも恥ずかしながらこの庭を持つまで手入れなどはやったことがなかったんです。やってみると自分は手入れが好きなんだということに初めて気づいて、今はとても楽しいです。

内村
店内のこだわりとかはございますか?
北口
まだまだ変えていきたい気持ちはありますが、庭に繋がるように無垢の木を使っていきたいと思ったことと、あえてベニヤを壁面に使ったところです。また、ビルの中でファサードがないため、入り口にインナーウインドウを作り、ちょっとした表現の場を設けたところです。

内村
ビルの中でもウインドウがあると印象が良くなり、店舗感がぐっと演出されますね。それにしても本当に心地良くて、お客様が思わず足を運びたくなる気持ちもわかります。

北口
なんか0次会という立ち位置で、17時くらいから飲んでちょっと立ち寄るお客様もいらっしゃいますね(笑)

内村
この空間の作り方もそうですが、北口さんは常に自分の好みの直球で勝負しているように感じるのですが、最初から貫けたのか、それともブレそうな時もあったりしたのですか?

北口
前職での16年の経験があったので、それほどブレるということはなかったですね。売れるモノやトレンドになるものはなんとなくわかってるんですけど、ただそういうのって一過性で、2〜3年でなくなっていくんですよね。

メンズって長く愛用したいお客様が多くて、10年前に購入したチノパンと同じものが欲しいって言われたりするんですよ。でも10年同じモノを作り続けているブランドってそうそうないんですよ。ただ、Sans limite(サンリミット)、TUKI(ツキ)など、頑なに同じアイテムを作り続けている硬派なブランドもあります。そういうブランドだといつのタイミングでも同じものが買えるので、そういったブランドにある程度絞って、専門店みたいな感じを提案したかったんです。
内村
なるほど。とても興味深いお話ですね。Signsというお店を作る前に、中学生時の買い物から個店セレクトショップまでの約25年の経験が物差しになって、その結果を見てこれたので、ブレることなくこの10年を走り続けることができたんですね。

北口
そういう感じで、ブレずに直球勝負ができていたのかもしれませんね。

内村
10年続くような定番アイテムの良さはわかりつつも、一方でずっと同じだと飽きられてしまうみたいなことはないのでしょうか?

北口
もちろん全てのアイテムが定番というわけではないのが前提ですが、例えば定番のアイテムってダメになるまで着てから次を買うというわけではなくて、気に入ったら素材や色違いでシーズン内、シーズン毎に買う方が多いので、購入サイクルは案外早いんです。
 
内村
なるほど〜定番アイテムといえど、全く同じということではなくて、素材やカラーを変えていくことで飽きづらい提案が出来るんですね。

北口
「買い足し」の考えですね。

内村
それはとてもいい発想ですね。定番は定番になっているだけの魅力はもちろんあるけど、それだけにしてしまうと鮮度が落ちてしまう。ほんの少し変化を加えながらも、本質はそのままに。そうして鮮度を保っていくということなんですね。

僕のヴィンテージウォッチのセレクトにも通づる感じがして、今後の方向性をブラさないためにとても勉強になります。

北口
話しながら思ったんですが、直球と言いながらも握りを少し変えてツーシームやナチュラルシュートのような球種も使っているのかもしれませんね(笑)

内村
めちゃくちゃわかりました(笑)


お店にいる時に北口さんが考えていることや休日などの過ごし方について教えていただけますか?

北口
お店を出す前はサーフィンなどをしていたのですが、この10年は特に何もしていないですね…お店を続けていくことに必死でした。

内村
この10年間は走り続けているってことですよね、ものすごくわかります!店休日であったとしても、頭の中ではお店のことを考えてしまいますよね?

北口
そうですね。やっぱり続けていくことが一番大切だと思っていますので。

前職を辞める時、メーカーさんから「これからは走り続けないと駄目だね」と言われて、その時には理解出来ていなかったんだけど、今ではそういうことだったのかと理解できます。子供たちもいたので、本当に余裕がなかったですね。

内村
お父さんとしても、お店のオーナーとしても走り続けていたんですね!

北口
思い返すと本当にそうでしたね。子育ても、お店の運営もだいぶ目処が立ってきたので、この辺りで少し自分の時間を作っていきたいなという思いはあるんですよね。

内村
これからしていきたいこととかはあるんですか?

北口
藤川(Debby)がすごい色んなところに旅行行ったりしているのを見ていたから、自分も海外に行きたいなとは思っています。お店を始めてからは全然行けていないので。

内村
藤川さんもおっしゃっていましたが、それはインプットをしたいということにもつながるんですか?

北口
そうそう。いつもとは違う感覚を感じたいんですよね。

内村
ちなみに行きたいところとかはあるのですか?

北口
行きたいのはアラスカですね!昔からずっとオーロラに憧れていたんですが、行くタイミングがなかったので(笑)

子供が今ちょうどカナダにいるので、メジャーリーグでも観ながらちょっと行きたいなという構想はあります。 

内村
行った際にはまたお話をお伺いさせてください!とてもためになるお話をお伺いできました。本日はありがとうございました!